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※本家と似ても似つかないよ
※好き勝手書いた結果マウストゥマウスだよ
※寛大な澤夏さんに最大の敬愛と謝罪を
※怒られたら消します
とりあえず、私は逃げる(←
「医者の不養生」
赤くなった顔を一目見るなりセドが言った。
果たして誰のせいか、あるいは、共犯者。思い当たるならいくらでもあるのだが。
「今日は仕事しなくていいから休んでおけよ」
ボールペンをコツコツと机に当てながら医者らしいことを言うのを、ビスは暇そうに聞いていた。
頭が痛い。転じて吐き気、原因は熱。自分でも解ることだ、これは大人しく寝ていたほうがいい。
「先輩、添い寝してくれないんですか?」
「馬鹿かお前」
そうそう甘くない人だ、普通こんな仲なら内側くらい汲み取ってくれてもいいのに。
諦めて一番奥の部屋を借りれば、当然ながらなんてことはない病室だった。だたし医者は来ない。
一応義務で着ていた白衣とネクタイを脱ぎ捨てるなり設置されたベッドに身を投げる。
シーツに沈んでいく感触と人のいなかった場所の冷たさに一瞬ぞくりとしたがすぐにまぶたの重さに負けた。
盲目のまま手探りで毛布を見つけると寝返りを打った。
ベッドが軋む。
・・・・・・コツコツと、あの音がする。
今日は誰が来るんだっけ、電話は二、三本あったような気がしなくもないけれど。
もしかしてイライラしてる、かなあ、俺が風邪ひくなんて思ってなかっただろうに。
いつものしかめっ面で考え事してて、ああ、その顔好きなんだよなあ。
あれ、なんだろう、遠い。
(還元されない、酸化した肺が心臓を圧迫するんだ)
・・・・・・息、苦しい。
(炭素が冷え固まって、世界一綺麗な姿で涙腺を伝って)
(ほら、泣く)
「ビス!」
突然感覚が上下に激しく揺れて胸倉を乱暴に掴まれたと思ったら唇が重なった。
キス、なんてものではない。むしろ人工呼吸だ。
何度か息継ぎをさせてもらって、ぎゅうと閉じていた目を開けば、なんて厭味な世界だろう。
全てが光源のように白くて、先輩は怒ったような顔をしていて、俺は酷い顔なんでしょう?
「・・・・・・平気か」
威厳に圧されて無理に頷けば彼は息を吐いた。
あ、駄目だ、かっこいい。
「気になって仕事出来ねえだろうが」
「だって」
息が乱れないように深く呼吸をする。
気遣いの空気が名残惜しくて残り香を触れるように手を口に当てる。
「俺、先輩が俺を一人にさせるなんて耐えらんない」
どうしよう今、泣きそうだ。
恥ずかしくて心細くて風が吹かなくて。
「お前、ほんっとーに馬鹿」
「すみません」
先輩は俺の額のDを親指でなぞると最後にめいっぱい押し付けた。
痛い痛いと抗議すれば笑って髪を撫でて、熱が逃げていく気がした。
どこへ?あるいは、共有してるだけ。
「今日は休診だな、こんなに手のかかる患者がいるとは思わなかった!」
意地悪い口角の上げ方をしてこちらを見つめるのは反則だ。
Can you hear me?
(悪いことを甘味って定義しようか?)